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■家庭でいちごつくりを楽しんでいる方のために、当地方(栃木県中西部)での栽培を基準に、私の長年の経験をまとめてこのページを作ってみました。幾らかなりともお役に立てばさいわいです。間違っている点がありましたらご容赦ください。

【基礎知識】  【毎月の仕事】  【苗の育て方】  【植付け】  【冬から早春まで】  【開花・結実】  【病気と害虫 ベランダで楽しむ】

第1時限  いちごについての基礎知識
「いちご」は「りんご」や「なし」と同じバラ科の植物で多年草です。種子をまいて育てるのではなく、ランナーと呼ばれるツルを育てて植え付け、実をつけさせます。原産地は南米だといわれています。
生育には10~25度C位の温度が良く、真夏の暑さや冬の寒さは「いちご」にとってはチョットかわいそうです。それでもけっこう丈夫で、真冬でも室内で凍らなければ十分冬越しできます。露地の場合、寒い地域ではワラや寒冷紗などを乗せて防寒対策をとればよいでしょう。
家庭で楽しむ場合露地で育てるのが普通ですが、夏に苗を育て10月に畑に植え付け、冬越しをして暖かくなった4月ごろ花が開き、5月に赤い実をつける、といったパターンで生育します。この生育の流れをしっかりと覚えてください。
多年草ですので毎年実をつけますが、同じ株ですと年々実は小さくなってしまいます。毎年新しい苗を育てて植え替えることが大きな実をつけさせる上で大事なポイントです。その時は必ず新しい畑に植え付けましょう。
初年度は10月の苗の植え付けの時期か、4月の「いちご」の生育に適した気候の時期にスタートすることをお奨めします。
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第2時限  毎月の仕事内容をおおまかに説明します(露地の場合)
4月スタートの場合
仕          事         内         容
4月 苗を植え付けます。この苗から実をとるのは結構むずかしいです。
5~7月 古葉は害虫のすみかになるので取り除きましょう。ランナー(つる)がどんどん伸びてきます。
7~8月 ランナーを切り離し苗床またはポットにうえつけます。活着するまで日除けをしたり、こまめに潅水します。
8月下旬
~10月
苗を育てます。
10月 苗を畑に植え付けます。(定植といいます)活着まで潅水します。
12月下旬 寒い地域では防寒対策としてワラや寒冷紗(カンレイシャ)などでで株を覆います。
3月上旬 防寒材料を取り除き、古葉や枯れ葉を取り、黒いポリフィルムでマルチング(土全体を覆い、泥のはねあがりや雑草の発生を防ぎます。)します。
4月 いちごが開花してきます。
5月 開花後約1ヶ月で赤い実をつけるでしょう。この時ヒヨドリなどの野鳥にご用心、食べられてしまいます。
 10月スタートの場合育苗の部分が無いだけで、手順は同じです。初めての方は10月スタートをおすすめします。
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第3時限 いちごの苗つくりの勉強をしましょう
いちごつくりのスタートは苗つくりです。親苗を植え付けてランナーを出すことから始めます。
親苗を植え付ける場所を選びましょう。日当たり、風通しが良くて、雨が降った時も水溜りができないような排水の良い所が理想的です。
植付け予定地が決まったら肥料を施して土と良く混ぜておきます。この作業は植付けの1週間前までに済ませておきます。
肥料の量は1平方メートル当り、石灰類100~200グラム、化成肥料(成分量によって多少違ってくる)50グラム位が目安です。
肥料を混ぜる作業はスコッブなどを使って20センチ以上
深く耕すのが理想です。
平らにした所に苗を植えます。株間は50~60センチとし、深うえ、浅うえに注意します。
植付け時期は4月~5月ですが、ある程度早く植えたほうがランナーの発生は良いようです。
植付け後1週間位は潅水をして活着を促進させましょう。
苗はホームセンターなどに売っていすが、良い苗はあまり見かけません。できれば種苗専門店で購入したいものです。
6月以降は順調ならランナーがどんどん伸びてきます。ランナーが混み合うようでしたら、重なり合わないようにつる配りをするか間引きをします。

7月中旬以降ランナーを切り離して苗床やポットに植え独立させます。
ランナーは点線から切り離しポットや苗床に植え付けます。
深植え、浅植えに注意します。
ポットの用土は鹿沼土や赤玉土など、排水のよいものを選びます。
肥焼けしやすいので、活着後に少量の肥料を施します。

①の苗より②③の苗の方が若くて良い苗になります。
苗を育てる際、本数が少ない場合は切り離さない方法もあります。根が少し伸びはじめた苗のところに、土の入ったポットを置き、根は土に埋め込みます。できたらピン等で押さえて下さい。この方法ですと100%活着するのでお勧めです。我が家の苗取り方法はこちらで紹介しています。
15~25日位で十分に根が張ったところで切り離します。
根が十分に張りランナーを切り離したところです。
ここまでくれば一安心です。少しの肥料と潅水に心がけでれば立派な苗に仕上がります。
雨に当てても大丈夫ですが、雨よけするとタンソ病の心配がないので私は雨よけ育苗をしています。
ポットを使わずに畑で育てると根が十分に張った立派な苗になります。(植付け時の株間は15cm×15cm以上は欲しいものです。)
ポットに比べると潅水等の管理は楽ですが、タンソ病等が出やすくなるので注意が必要です。
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第4時限 植付け用の畑の準備し、植付けます

畑の選定 ・日当たり風通しが良く、排水の良い畑を選びます。連作地ではないほうが良いでしょう。
肥料 ・植付け予定の10日前までには施して土と良く混ぜておきます。(出来るだけ深く耕します)
       肥料の量は1平方メートル当り、化成肥料100グラム(成分により若干異なる)石灰類100~200グラムとします。
      ・有機質肥料(堆肥、骨粉、油粕など)はいちごの品質を良くするといわれています。。
植付け床と植付け方法 ・9月下旬以降、遅くも10月いっぱいには植え付けを終了するようにして下さい。
                  ・寒い地方では早めに、温暖な地方ではゆっくりめがお奨めです。

植付け床は出来れば写真のように大きく盛り上げてほしいものです。幅100~120センチ、高さ30センチ位がベストです。もし無理でしたら、平床でも良いのですが排水には十分配慮しましょう。
植付け方法は、実のなる方向が畝の外側になるようにし、株間は25~30センチが良いでしょう。いちごの花芽は上の写真のように矢印の方向に出る性質を持っていますので、株元を確認しながら植えていきます。私たちは通路側に実がなるように揃えて植えています。定植の際は浅植え、深植えにも十分注意しましょう。
定植後1週間位は株元が乾かないようコマメに潅水し活着を促進します。
定植後に発生したランナーは早めに摘み取って株の充実を図りましょう。また、古くなった下葉は摘み取り、出来ることなら常に展開葉が5~8枚の状態にしておければベストです。 

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第5時限 冬から早春までの管理を勉強します 
冬の防寒対策
最近の品種はビニールハウスを使った早出し促成栽培用に改良されているため、花芽分化が早く露地でも12月以降開花してしまうことがよくありますが、この花を結実させるのは難しいものがあります。寒い地方ではメシベが凍死してしまいますし、もし結実しても低温下では大粒のいちごに育てることは大変難しいことです。そこで、暖かい地方を除いて、この時期の花芽は摘み取ってしまい、早春(3月頃)以降の開花に期待したほうが良いと思います。 
いちごは結構寒さに強く、関東以西での越冬は容易です。(ただし、最低気温がマイナス10℃以下になったり、根雪のある地域では細心の注意が必要でしょう。)秋の定植以降根が良く張っていれば、厳寒期(12月下旬~2月末)に保温資材(ワラ、寒冷紗、その他通気性のある保温資材)を直接株の上から掛けて保温すれば十分でしょう。西南暖地や海岸地帯で冬の寒さが厳しくない地方では、防寒対策をしなくとも大丈夫だと思います。当地は温暖化で以前ほどの寒さはなくなりましたが、それでも真冬には最低気温が-7℃位を記録することがありますが、寒冷紗を被覆することで冬を乗り切っています。
いちごは寒さが厳しくなると休眠する性質を持っていて、寒さが厳しくなればなるほど活動を停止し、寒さから身を守っています。そのため、低温、乾燥に耐えられるのですが、極度の乾燥はいちごの株を枯らしてしまいますので注意が必要です。
早春の作業 
立春を過ぎると陽射しは日増しに強くなり、休眠しているいちごの株は、気温、地温の上昇を待ち望んでいます。地域差はありますが、3月を迎える頃にはいちごの葉もいくらか緑色を増して、少しずつ活動を開始します。この頃、保温資材を取り除き、枯れた葉や古い葉をきれいにに取り除きます。付けておくと病害虫の発生源になります。
次に黒いポリフィルム(透明のフィルムでも良いのですが、雑草が生えやすいので要注意)でマルチングをしてやります。写真のように株全体をすっぽりと覆い、株の真上を小さく切って株全体を引き出します。マルチングをすることにより、地温の上昇、雑草の発生防止、泥のはね上がり防止、いちごの実の腐敗防止等々の効果が期待できます。
この時ビニールでトンネル状にして保温すると、温度管理が難しくなります。ビニールを閉め切った状態ですと、すぐ温度が40℃以上に上昇してしまい、花や新葉に障害を与えうまく結実しません。もしビニールで覆う場合はスソを十分に開け通風を図り、急激な温度上昇を回避しましょう。

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 第6時限 開花、結実、収穫までの管理です 

開花 気温の上昇とともにいちごの生育は盛んになり、まもなく開花してきます。(ソメイヨシノの開花期と同じ時期かと思います。)この時期はまだまだ寒い日があり、晩霜があったりしますが、これがいちごの花にとっては問題です。元来寒さに強いいちごですが、その中でいちごの花のメシベは寒さに弱く、強い霜に当たったりすると死んでしまい、実は肥大できなくなってしまいます。露地栽培の場合はどうしようもないことですが、寒冷紗等の保温資材があれば、冷え込みそうな時に夜間だけ被覆してやるのも効果的かもしれません。
 いちごの花や実は水気には弱く、長雨の場合、開花しても受粉がうまくいかなかったり、実が腐ってしまうことがあります。これらの対策として効果的なのが透明ビニール等による「雨よけ」です。この時気を付けたいのは、株との空間を取り、地際は十分開けておき通風が図れるようにすることです。

結実 寒さや雨などの影響を受けずに咲いた花は、自然の風やミツバチなど訪問昆虫の助けを借りて受粉し、結実します。後は実の肥大を待ちましょう。
 この時期、元気の良い株からはランナーが伸びてきます。養分の分散を避ける意味からも株元から切り取ってしまったほうが良いでしょう。来年用の苗は6月以降に伸びてきたランナーで十分です。
収穫 開花からおよそ1ヶ月で収穫を迎えます。当地では5月20日頃になりますが関東南部や西南暖地ではもっと早まるでしょう。この時期いちごの赤い実を狙って「ヒヨドリ」がやってきます。油断していると、人が食べる前に全部食べられてしまうこともあるので、前もって対策を立てておくことをお奨めします。また、雨や湿気が多かったりすると「ナメクジ」が出没することもあります。(ホームセンター等に忌避剤があると思います。)

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 第7時限 いちごの害虫と病気について勉強しましょう (06/6/18更新)
家庭でいちごを育てる場合、出来るだけ無農薬で育てたいものです。害虫防除や忌避剤として「木酢液」「牛乳」等、病害防除として「焼酎」等が考えられますが、効果はさだかではありません。
肥料を多く与え過ぎたり、日当たりや風通しの悪いところ、また、排水の悪いところに植えつけた場合に病害虫が発生しやすくなることが考えられますので、いちごが健康に育ち、病害虫が発生しにくい環境を作ることに努めてください。それでも病虫害が発生してしまった場合には、下記の事項を参考にしてください。
害 虫 日頃からコマメに観察し、害虫を見つけたら早目に対応することが大切です。
  害 虫 名 特 徴 と 生 態 防除法と使用農薬名
アブラムシ類 種類が多く、体の色も黒、緑、白といったように色々いる。露地では春から秋にかけてかい時期に発生し、茎や葉に付いて樹液を吸う。ベタベタとした体液を出しアリと共生してることが多い。 殺虫剤の散布で防除する。
マラソン乳剤・アーデント水和剤
モスピラン水溶剤
オンシツコナジラミ 白く小さい羽のある虫で、殆どの植物に付く。高温期は繁殖が早く葉の裏が真っ白になるほど付くこともある。フンで葉が黒くすすけたようになる。 殺虫剤の散布で防除する。
モスピラン水溶剤・アプロード水和剤
ダニ類 肉眼では確認しにくい小さい虫で、気が付いた時はいちごの生育が衰えてしまっているとがある。高温、乾燥の条件下で発生繁殖が盛んで、ひどくなると、くもの巣が張ったような状況になり防除は困難になる。 発生初期に発見し、しっかりと防除する。
ダニトロンフロアブル・ニッソラン水和剤・

ハスモンヨトウ 一般的に9~10月頃に大発生することがある。蛾の幼虫で幼令を重ねながら大きくなり葉や茎を食害する。 殺虫剤と脱皮阻害剤の散布が有効である。
殺虫剤・アファーム乳剤
脱皮阻害剤・アタブロン乳剤
病 気 下記のものが主だった病気です。害虫同様コマメに観察して、早期発見、早期防除に心がけて下さい。
病気名 特     徴 防除法と使用農薬名
うどんこ病 名前のとおり、うどん粉(小麦粉)を振りかけたように、実、葉、茎が真っ白になる。20~25℃で多く発生し、真夏の高温下ではあまり発生しない。
肥料や水分が多すぎて、軟弱に育っていると発生しやすい。また、太陽光線が不足した時にも発生が多い。
肥料や潅水が多すぎないように注意し、太陽光線にも十分当てて病気にかかりにくく育てる。
発生した場合の使用農薬
トリフミン水和剤・ポリオキシンAL乳剤・カリグリーン・サンヨール乳剤
灰色かび病 湿気の多い時に、肥大した果実や幼果が腐ってしまう病気で、ハウス栽培では菜梅雨のころ被害をうけることがある。露地では雨の日が続くと発生し、かびの生えたような状態になる。 出来る限り風通しを良くし、乾燥させてやる。
潅水が多すぎないよう注意する。
農薬の効果はあまり期待できないが、掲げてみます。
スミレックス水和剤・ポリオキシンAL水和剤
たんそ病 近年発生が多く、夏の高温期に苗に多発すると大きな被害をもたらします。葉に墨をたらしたような斑点が現れたり、茎が赤黒くくびれた症状が見られ、最後は枯れ死する。 発生してからの防除は困難なので予防に心がける。
土のハネ上がりで発生、蔓延しやすいので、夏の間(6月から9月頃)雨よけして育苗すると予防効果が高い。
根腐病 排水が悪い畑で、いちごの生育が停滞してしまい、最後は枯れてしまう。 「たかうね」にし、水が溜まらないようにする。
排水を良くするための対策をとる。
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補習授業 ベランダ等で楽しむ方のために
育苗・定植までの管理は露地栽培と全く同じです。
植付けのための容器はプランター、発泡スチロール箱、鉢等自由ですが、1株当たりの用土量が少ないと管理が大変です。出来るだけ用土量を確保しましょう。肥料の量はなかなか難しいのですが、いちごの根は肥料に弱いので、有機質(腐葉土、油粕、骨紛等)を主体に土と良く混和し、植付け10日前位までには用意し、十分湿らせておきます。植付けは65型プランターで3~4株が良いでしょう。1株当たりの用土量は2リットル以上は欲しいものです。定植後は用土量の少いものほど土が乾燥しやすいので注意が必要です。
屋外(露地)で楽しむ 室内で楽しむ
室内で楽しむよりは管理は楽ですが、5月頃にならないと赤い実は成りません。冬期間の乾燥にさえ気をつければ比較的容易に栽培できます。現在早だしの品種が大半で、屋外でも晩秋から冬に開花するものがありますが、マイナスの気温で雌しべは死んでしまいますので、その時期に開花したものは摘み取ってしまった方が良いでしょう。(西南暖地や無霜地帯の陽だまりでの栽培なら、その心配がないかもしれません。)当地(栃木県)ですと4月開花、5月結実となります。 現在栽培されている多くの品種は9月下旬には花芽分化するので、11月以降室内で上手に管理すると12月から1月には赤い実をつけます。いちごは比較的寒さに強いので、室内でマイナスの気温にならなければ冬越しは十分に可能です。この場合、日中は出来るだけ高温の条件(寒い時期はガラス越しの太陽光線に十分当てる。)におき、夜は凍らないように配慮してやります。問題は開花時の受粉です。自然条件下ではミツバチ等の昆虫が受粉の手助けをしてくれますが、室内の場合は人為的に受粉の手助けが必要になります。花の中を軟らかい筆や綿棒で軽く撫でたり、手で軽くゆすったり、ヘアドライヤーの温風を遠くから当てる等をすることにより受粉の順調な進行が期待できます。。この時、温度が高いほど(25℃くらいが最適)受粉率が高といわれています。
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